
蒼平
そうへい
犬村で蒼平屋を営む狐。外から来た兎の世話役を名乗り、住まいと仕事の困りごとを商いに変えていく。
第二話
困りごとは、仕事になる。
『兎サムライ』第二話の公式案内ページ。舞台は犬村へ。積み重なる小さな乱れと、それを商いに変える狐・蒼平が登場します。本編はXで公開中です。
舞台は、兎村を出た先にある犬村。かつてのこの町は、溝も路地も掃き清められ、荷車は端に寄せられ、隣人が互いに声を掛け合う静かな場所だった。
いま、その空気は変わっている。兎の集まる一角では、路地口に捨てられた菜屑、札を持たないまま「弟子」「修行」と呼ばれて働く者、「修行中」と掲げた小屋に詰め込まれた寝床——ひとつひとつは小さな乱れが、犬村の暮らしに具体的な面倒として積み上がっていく。瓦版はそれを「また兎の揉め事」と束ね、路地の苛立ちを村ぜんたいの「兎の問題」へ育てていく。
そこへ、蒼平屋を営む狐・蒼平が現れる。素木綿の羽織で街頭の聞き取りに応じ、「渡り者とて、万に一人のならず者を除けば、みな御法度を守る堅気でござんす」と犬村をなだめ、そのうえで「あっしは、その万に一人の逸材でござんす」と自らを名乗る。翌朝、黒漆の馬車が聞き取り人を本店へ運べば、そこにいるのは盛装の蒼平と、舶来の金懐中時計だった。
やがて聞き取り人は、蒼平屋が差配する家々に誰が住んでいるのかを追いはじめる。集まりの外へ広がった貸家では、新しい家主の名と倍になった店賃、そして月末の明け渡しを告げる書付が、長く住んだ老いた犬の夫婦のもとに届いていた。空いた家はまた寝床の数で測り直され、数日のうちに宿になる。路地は荷車で塞がり、夜の声は壁を抜け、朝には片づかない塵が残る。住まいと静けさを失うのは、犬村の住人だけだ。
同じ頃——兎蔵の一家は、まだ城壁の外を歩いている。